はじめに
措置から契約に制度が変わり、処遇においても訓練からサービスの方向に変わってきて、どうしたら本人が喜ぶのかに焦点が当てられています。契約で本人の希望を聞くようにと行政指導もあります。H14年度までは、医療の設備や管理の充実がサービスととらえ、今後、高齢化を迎えていく上においては、施設の生き残る対策の一つになると考えていましたら、H15年支援費制度に入り、「施設は医療機関ではない」という本来の形が強くなってきました。
今後、益々、施設医療の中で高齢化の問題、リスクの問題が重要な課題となります。また、医療でのQOLの問題は、ターミナルケアをどう見ていくかということであります。今日は普段から思っていること、考えていることなどを、ご出席の皆さんと意見を出し合い協議したいと思います。---------

議題 支援費制度(契約)に変わり、「健康管理・医療管理」にどの様な考えで取り組んでいるのか。

鷹取学園は、開所当初から最重度知的障害者対象者が多く、その上、さまざまな重複障害を抱えているために、医療とのタイアップなしでは利用者の生活を支援していけないという施設であり、医療重視の方針がなされてきました。
(施設医療は、施設長の方針で決まることであり、施設の特色として考えられることになります。)
医療管理(健康管理)の基本的な考え方
「実質的な必要性、客観的な見方、常識範囲の考え方、精神療法的な対応などを基本として、臨機応変な対応を交え、日常的な物事がスムーズに流れ、無理なく、危険がなく、治療教育に役に立つことを目指す。」ことに努める。
医療機関については、開所当初から医療機関を固定化して、連携を蜜にして信頼関係を作りあげ、また、固定化の継続でもって診療をスムーズにしてきた。
医療機関の固定化については、数年前、行政指導より地域医療ということで、固定化をさけるような指導がありましたが、当園の対象者を考えると、でき難い状況があり、固定化で取り組んできた。このことが、今年度の協力医療機関(指定医療機関)づくりがスムーズにいくこととなる。
管理については、@ 病気治療についてはマニュアルに沿って実施→別資料
A 日常の健康(医療)管理については、連携管理を重視、「当園の健康管理体制」のマニュアルに沿って管理、状態の観察及び判断は指導員との協力で行ってきた。→別資料
(1) 支援費制度(個人契約)に変わり医療管理がどう変わるのか。
契約での医療問題を考えるとき、根本は、「施設は医療機関でない」という原則
を守るということが強くなる。このことが一番、施設看護婦が悩む点である。
何故ならば、利用者が変わるわけでもなく、医療の関わりは、高齢化を向かえ
今以上に必要になってきている。また、「施設は医療機関でない」ということは、
学園側の情がらみの一方的な対応ができにくくなるということにもなる。
そして、また病気の介護は親が何よりであり、親の務めとして当たり前に戻す
ことにもなる。はたして、当たり前に戻すことができるのか。
*「施設は医療機関でない」という意味は、「病院は医療と保護であり危険な人を入れるところ、施設は訓練教育が中心である」と言うことであるが、施設は、この二面をもって対応している状況である。
当園は、施設の指導で、できる範囲の訓練をしても悪くなれば、医療機関に行くという原則」を打ち出して契約しているが、どうしても情がからみ「原則」通りになった例はなく、余程のことがない限り医療機関への移行はしていない。

1、問題点とその対応についての考え方
@施設での医療処遇は、行政指導の支援、対応の枠外であり、これをどう対応していくのか。
* 施設は「医療機関でない」ということが原則であるため、施設での診療、
医療行為については、その時の状況でケースバイケースの形で対応していくことがスムーズに行くと考える。
A医療機関との連携をとり、医師の指示のもと医療的ケアを行うにしても、医療機関の範囲の内容を施設で見るという問題点についてどうするのか。
*これは、リスクの問題でもあり、訴訟問題にならない対策を考える必要がある。施設医療での一番のリスクは癲癇重積発作、それに伴う嘔吐の誤飲や窒息、精神障害の異常行動、園生同士の怪我、服薬管理の事故などがあげられる。
医師の指示のもと施設でやれる範囲の内容を、家族と職員も医師の診断と治
療方針を納得してもらい、施設と家族でやれる範囲の内容を相互で確認し取り
決める。その時に、看護師は医療上の「専門的な助言」をしていくこが大事
である。
*リスクの問題解決は、親の信頼第一であり、その対策として、
A.特に精神科の問題は、糸井先生の講演の中にありましたが、診察には保護者の同席を義務つけ、指導員の報告で実態を知らせて現実を正しく認識してもらう。また、この積み重ねがDrと職員と保護者間の信頼を築き、職員も成長していく過程になっていく。
B.機会あるごとに、医療のインフォームドコンセントを代用した形を重ね、家庭状況にも思いやりを持って接する。
C.処遇現場でのパソコン活用をもって。
その他
今、医療機関で「インフォームドコンセント・クリティカルパス・セカンドオピニオン」ということがなされているが、こういう応用は、施設医療に役に立つと考える。
*「セカンド オピニオン」とは、第2の意見を聞く診療で、学園も保護者の納得がいかない場合は導入している。

2.各施設の現状より、医療管理の困難なことについて
鷹取学園の体制と管理について
*契約の時に立会い、保護者一人一人に健康管理と医療管理を伝達、困難な点は助言しながら事前了解を取る。
(1) 健康管理の問題
健康診断については、義務付けられたことを実施、このことが、でき難い人に対しては、親の了解を必ず念押しで取っている。検査結果の異常な人については個別に伝達としている。
日常の管理のあり方は、当園の「健康管理体制のマニュアル」に沿って実施、
この図は組織運営にとって絶対必要な連携管理である。
問題は、指導員との協力管理体制(状態の判断と対応)、連携プレーの管理をスムーズに動かせるかである。このシステムが確立することにより、きちっとした健康管理と施設生活援助としての処遇が成り立つ。また、この体制を徹底して守ることが、園生の安心した生活に繋がっていくことになる。(経過より確信している。)
(2)診療の問題
開所以来、医療機関を継続して固定化してきたため、協力医療機関(指定)の
外来治療については特に問題はないが、大きな医療機関の検査や入院となると厳しい問題となる。その理由として、@知的障害者に関する理解または専門性が低いように感じられる。A苦情や訴訟問題などを考えてか、Drの一方的な判断で進められることが多い。B初めての場は、雰囲気で不安から落ち着きがなく、周りに迷惑をかけることなどが上げられる。
今の医療機関は、福祉医療から「ビジネス的医療」になってきている。また、リスクのことなどは非常に神経質にあると感じる。
(3)高齢化の問題
まず、医療との連携なしではやっていけない。
高齢度が高くなればなるほど、医療ケアの度合いが高くなる。入院問題も当然起こり付き添い問題も起こってくる。特に最重度者や精神科疾患を重複する人達へのケアには、24時間体制と言う条件が必須となる。また、医療は行政指導の枠外だといって簡単にかたづく問題ではない。(情からみの問題、職員の人的問題、家族を抱える問題などある。)
支援費制度が始まり3年後の平成17年には、介護保険が導入されるのか。また、どういう内容の体系になるのか。 今、施設の看護師が施設医療について、どうあるべきか、問題提議をする時ではないかと思う。→ここで当園の副園長に今後の行政の方向について話しを聞く。--------行政の資料あり。
*福岡県の監査指導の専門官のアドバイスより
診療がスムーズにいかない、入院が困難と言うことについて
→施設の中で診療所に近づけた環境設備を整えて医師の協力を得る方向を進めると良い。また、近辺の施設と協力し合うことも大事である。
(4) ターミナルケアの問題
今後は益々、介護を受ける利用者が増え、親亡き後は施設援助で「レスパイトケア」まですることになる。(高齢化が進んだ施設は取りくまれていると思う。)
始めに申したように、施設でのターミナルケアなどは、施設医療のQOLという質の問題であり、高齢化の問題、親亡き後の問題を含み、このことについてどう考えればよいのかが課題となる。
ターミナルケアは、各施設の「施設長の方針」によるところであるが、大事な点は、職員の善意性の問題だと思う。看護師だけではできないことであり、やはり指導員との連携プレーが必要となる。全職員がボランテァ的な善意をもった仕事ができるのか。このことは、進める上で重要なことである。
生への限界まで園でみて、最終段階で入院の形を取るというやり方、この形は絶対に良い方法とはいえないが増えることは間違いない。そして、また保護者と学園が本気で協力し合うということが無ければできない問題である。(職員付き添い費は、17:00〜9:00までの泊まりで10000円)
ケース(1) 中村淑子 「大腸癌・肝臓癌」で永眠の直前まで学園で看護
→体験より「環境設備」が必要
(5)パソコンの活用については資料添付と希望者は現場にて説明

3.その他
A.マニュアルの必要性とその資料
医療のマニュアルについては、日常生活面での必要性からとらえたマニュアル化が必要である。
a.病状の経過を見るような、血圧測定の週課表など。
b.病気治療について(契約)
c.個人別の健康管理表と医療管理表
*管理体制も大事であり、指導員との連携がスムーズに流れる協力体制が何より大事なことである。
B. 専門職としての施設看護婦の心構え
施設看護師として専門職の勤めを果たすには、当然心がけなくしてはできない仕事であります。看護婦の心がけ次第では、改善につながる要素の一つとなる。
要は、看護師は嘱託医の考え方を受け止め、指導を受けながら指導員が指導しやすいように、医療面よりアプローチすることである。その他、私ごとでありますが、まず、@に損な立場にあることが当たり前と心し、損を徳に替え楽しく仕事をする。(利用者100人まで看護師は一人:施設は10年経過すると仕事量は倍以上になる。・精神科の薬の問題、状態急変、死亡の件、精神科入院など恨まれることが多い。)また、施設には犠牲的なことがつきものであり、園生、職員、保護者と誰かがいろんな場で、損な役目を引き受けながら全体が成り立っている。看護師は専門的ないろんなことを気づいて三者を支えるくらいの仕事をしなければならない。(専門性とは徹底して行う。)
糸井先生の講演の中に精神療法のことがありましたが、Aに言葉かけの凄腕になるよう努力をする。これは、精神科の治療や指導員が指導しやすいように、園生の日課への意識づけや、精神面に役に立たなければならない。(一日1回は全員に言葉をかけ表情をみて、スキンシップをする。)、指導員との連携管理をするため、B指導員の心身の健康管理と処遇現場の「フォロー」をする。
Cに仕事への熱意はバランスよくあること。全体が(廻り)見える程度ときめ、臨機応変さをもって仕事をする。Dに挫折しないための戒めとして、使命感、責任感を持つことが薄れていないか。うぬぼれていないか。慎重さがしっかりあるか。明るさがあるか。えこひいきの扱いをしていないか。その他--------
Eに看護職の原点は「人を救う」こと、そしてそれは、そのまま「自分を救う」ことになるという言葉を大切に思い心がけの一つにしている。

*最後に、今後の施設医療には、どういう問題があり、その方向性を見極め、どのような形づくりを進めればよいのかだと思います。各施設の特色で考えをまとめて、情報交換ができることを願っています。
                        H15.11.21 山下桂子