別添資料No1 平成23年度入所者の健康管理について
平成23年度 健 康 管 理 報 告 書
看護師 菅原 涼代
〈健康管理について〉
平成23年度も前年度と変わりなく健康管理を進めました。健康管理方法としては予防に重点を置き、入所者に対してケースバイケースで対応しました。入所者個々人の健康を管理出来たと思います。
〔具体的説明〕
○インフルエンザについて
平成23年度は、11月1日にインフルエンザ(3価)の予防接種を入所者対象に一斉に実施しました。日常生活においては徹底したうがい・手洗い指導を行い、加湿器を使用しインフルエンザ対策を行いました。平成23年度は入所者で、インフルエンザにかかった園生は、4名でした。
その中の1名は、家族の協力を得て自宅療養して頂き治癒しました。帰園に際しては主治医の治療終了確認の了解を頂いた形で帰園して貰いました。他の3名に関しては、医務室隣の静養室にて体調管理を行い、インフルエンザ感染を抑えることが出来、感染者が増えることはありませんでした。通常日課に於いても職員・園生共に毎食前の手洗いと消毒液を用いた消毒を継続実施しています。
○入院について
今年度は、3例の入院がありました。
1)44歳 女性 小脳部脳腫瘍でOPeにて入院
2)57歳 女性 右足脛骨腓骨近位部骨折(骨接合術OPe)入院
3)45歳 女性 癲癇発作(発作後後遺症で嚥下困難)入院
現在も継続している障害者自立支援法の下では、通院支援と受診時の支援、入院後の経過伺い等が施設側の支援対象となり、後は家族にお任せする体制になっています。
◇平成23年度 入院時の状態説明
1・2・3)の事例では、家族が付き添われ入院又は、手術を受けております。
当園は、重度・最重度の入所者が多く、保護者及び兄弟姉妹も高齢化しています。病院側からの付き添い要請があったとしても現在の学園職員数及び体制では入院時に充分な手が届かないのが実態です。しかし、現実に入院問題が起きればどの様な方法でも対応しなくては入院治療が受けられないという問題が生じてきます。
医療機関に対して、知的障害者をいかに理解してもらうかといった色々な働きかけが大きな要素となります。それには家族の努力、医師との協力体制が可能であるといったところでしか実現しません。
一般の人が入院するという意味では、重度の知的障害者が入院する場合では、常識では考えられない様な事態が生じますし、入院問題ではいろいろとハードルの高さが生じ、それに対しては正面からぶち当たってみないと道は開けないという経過が過去にはありましたし、現在も継続していると言えます。
今後、現在の社会福祉の流れがどう変化して行くかは判りませんが、どのような体制になろうとも、益々増えてくると思われます知的障害者の医療問題に対して、実際にどの様に対応していけるのかが大きな課題として残るところです。
〈精神科疾患者の治療〉
平成23年度は精神科の診療は前年度に引き続き、嘱託医となられた鳥巣医師により月に1度(第2木曜日)の診察が行われました。
現在73名の入所者の中で、39名の入所者が診察・投薬治療を受けています。診療状況は治療を受ける本人・医師・看護師・支援員・保護者という態勢で治療を進めています。
平成23年度は、全体としては落ち着いていたと思います。今後とも、家族の協力の基に、職員は入所者の症状の変化を把握しながら、病気が少しでも改善される方向に向かうように取り組んで行きたいと思います。
〈歯科治療〉
入所者の歯科治療については、重度・最重度の知的障害者を持つ人達でも問題なく受診する事が出来るようになっています。 しかし、中には情緒不安定の人がいて時々騒がしい場合もあります。当園の入所者は、定期的な検診・治療のおかげで歯科に関しては普通の人並みに口腔内の状態保持はできていると思われます。それを維持させて行くためには、毎食ごとの歯磨きは支援員に頼らなければなりません。歯磨きに関しては昨年同様、本人が磨いた後に職員が磨き直しを行っています。
人が生きていく上で歯はとても大切ですから今後もブラッシング指導の大切さを基本におきながら口腔衛生に力を入れていきたいと思います。
現時点での歯科治療に対する問題点は、入所者の高齢化による義歯の装着者が増えたことと、その咬み合せがうまくいかないといった点です。 また装着した義歯をすぐに外して捨ててしまうといった事が問題となっています。
〈健康維持・管理内容〉
1)毎日実施
投薬を必要とする園生
精神科:統合失調症、癲癇発作のある人。
内科・眼科。その他、必要に応じた場合の対処。
2)毎週実施
@ 全園生に対する検温(原則として毎週月曜日に実施)
A 血圧測定(病気により34名実施)
B 魚住内科胃腸科医院 隔週火曜日往診
3)毎月実施
@ 体重測定
A 精神科医による診察
4)3ヶ月に1回実施
@皮膚病検査
5)年に1回実施
@ 心電図検査(35歳以上)
A 身長測定
B 委託検査
歯科…全園生対象(4月実施)
インフルエンザ予防接種
精神科内服者の血中濃度検査(年2回)
C 眼科検診
D 子宮癌検診(35歳以上の女子で診察可能な人のみ)
6)法定検査
@ 健康診断…前期・後期の全2回(前期は班別通院、後期は往診)
(成人病検査・血液検査・尿検査・血圧測定実施)
他、健康診断の結果、医師の指示のある人のみエコー検査・その他の検査を実施
A 胸部レントゲン検査…年1回前期65歳以上(県の指導より)
以上、平成23年度の医務に於ける計画に関して、当初計画の内容通りに実施できたと思っています。全ての結果は記録として残しています。
〈老齢化対策〉
重度・最重度の知的障害者の人達の健康状態を見ていると一般の人より遥かに加齢化は早いと感じます。学園全体の大きな問題点としては、重度・最重度の知的障害者を持つ人達には受け入れてもらえる専門病院がなかなか見つからず入院でき辛いという現実です。
医療機関からの入院条件としては、本人が訴えることが出来ないか或いは分かり辛いために、家族並びに学園職員の付き添いが必要であること、医師が患者さんに治療をするにあたって、インフォームドコンセントを行いますが、その時の了解が確実に保護者の理解がなされているのか、といった医療事故を防ぐための保障があるかないかといった事です。
平成23年度は、3名の園生を入院させましたが、実際にはなかなか入院させて貰える病院がほとんど無いことが分かりました。 益々重度の知的障害者を受け入れてもらえる専門病院の必要性を感じました。入院問題については今後も色々な問題点が生じると考えます。
保護者の方も頭の中では分かっておられるようですが、現実に我が子の問題として起きた場合は、慌てふためいた状態で、どうして良いか分からなくなってしまう事が殆どです。
今までも人権尊重ということで個人情報となる個人的治療経過等に関しては、各個人ごとに通知してきましたものの、実際に保護者に知らせようとしてもなかなか連絡が付き辛いといった問題もありました。
保護者に協力して貰わなければならない点としては、入所者が学園で生活する上で、個人ごとに抱えている病気等の問題については、その時、その場面で出来るだけ詳しい情報をお伝えし、その後の治療に対する最終判断は、家族と医師との間で決定し進めて貰う事を伝えています。
長い間の課題ではありますが、本当に重要なことと思われる点は、重度知的障害者が入院するようになった場合は、現在の医療体制においては、どこの病院でもすぐに入院を受け入れて貰える病院が少ないという現実があることを、ご家族がもっと知っておかなければならないと言えます。
学園としても、そのような話を常日頃から情報として伝えて行かなければならないと考えています。
学園の健康管理体制
学園の健康管理体制に沿って実施。
嘱託医、協力医療機関及び準協力医療機関
下記の通りです。
1、鷹取学園嘱託医
精神科 医療法人 福翠会 高山病院 〒822-0007 直方市大字下境3910番地50
電話 0949-22-3661
精神科医 鳥巣 美穂
2、協力医療機関
内科
魚住内科胃腸科医院 |
|
|
|
院長 |
魚住 浩 |
|
|
所在地 |
直方市頓野1919-4 |
| |
電話番号 |
0949-26-6610 |
|
歯科
安河内歯科医院 |
|
|
|
院長 |
安河内 半六 |
| |
所在地 |
直方市日吉町3-12 |
| |
電話番号 |
0949-24-0577 |
|
外科
西田外科医院 |
|
|
|
院長 |
西田 博美 |
| |
所在地 |
直方市頓野2104-19 |
| |
電話番号 |
0949-28-1573 |
|
精神科
高山病院 |
|
|
|
院長 |
高山 克彦 |
| |
精神科医 |
鳥巣 美穂 |
| |
所在地 |
直方市下境3910番地50 | ||
電話番号 |
0949−22−3661 |
|
3、準協力医療機関
眼科
阿部眼科医院 |
|
|
|
院長 |
阿部 健司 |
| |
所在地 |
直方市溝掘2-3-13 |
| |
電話番号 |
0949-22-2953 |
|
内科
直方中央病院 |
|
|
|
院長 |
野田 晏宏 |
| |
所在地 |
直方市感田3573-1 |
| |
電話番号 |
0949-26-2311 |
|
外科
西尾外科医院 |
|
|
|
院長 |
西尾 禎一 |
| |
所在地 |
直方市津田町9-39 |
| |
電話番号 |
0949-22-2684 |
|
皮膚科
おおもり皮膚科クリニック |
|
|
|
院長 |
大森 正樹 |
| |
所在地 |
直方市感田井牟田1930-1 | ||
電話番号 |
0949-26-6520 |
|
産婦人科
田中産婦人科クリニック |
|
|
|
院長 |
田中 康司 |
| |
所在地 |
直方市頓野1000-27 |
| |
電話番号 |
0949-26-8868 |
|
耳鼻科
岡村耳鼻咽喉科 |
|
|
|
院長 |
岡村 浩一郎 |
| |
所在地 |
直方市頓野3816-3 |
| |
電話番号 |
0949-22-2683 |
|
その他、園内における医療対応の変化
◎ 結核検診について
魚住医院で実施しました。(平成17年度から65歳以上のみ)
重度知的障害者の今後の医療的問題点
・知的障害者を診察してもらえる専門医が少ない。
・身辺自立の出来ていない、重度の知的障害を持つ人達を、入院させてもらえる病院が殆どない(精神科の病院でもなかなか入院させてもらえる所が少ない)。
・入院に際し、保護者以外に学園職員の付き添いが必要な場合、園の職員勤務体制が崩れ、入所者の支援体制が不安定になる。
・益々高齢化が進み、具体的に知的障害者の医療問題をどの様に解決していけば良いのか、またその様な体制が出来るのか。