平成20年度    健 康 管 理 報 告 書

                                        看護師  永冨千夏

〈健康管理について〉

平成20年度も前年度と変わりなく行政指導の範囲を計画として健康管理を行い、管理については予防に重点を置き、入所者に対してケースバイケースで対応し進めることが出来たので個々の健康を維持管理出来たと思います。

平成20年度は、1117日にインフルエンザの予防接種を入所者・職員が一斉に行い、生活においても徹底してうがい・手洗い指導を行い、加湿器を使用し対応しましたが、1月中旬からインフルエンザにかかる人が続出し、自宅療養の出来る人については帰省療養させ、自宅療養が難しい人については園内で隔離し、かかってない人との接触を避け作業も中止して対応しました。医師の指示の下、解熱後48時間まで隔離、毎食前手洗い・消毒液による消毒を実施し、職員はマスクを使用しケアにあたりました。その結果、2週間ほどでインフルエンザの流行はおさまりました。現在でも毎食前の消毒液を用いた消毒は継続しています。

今年度は、2例の入院がありました。

1)39歳 男性 直腸粘膜脱出症候群の再発の為入院

2)40歳 男性 左足の血栓性静脈炎の治療の為の入院

現在の支援費制度では通院支援と受診時の支援までが施設側の支援対象となり、後は家族にお任せする体制になっています。

○平成20年度 入院時の状態説明

1)の事例は、家族付き添われ入院し手術を受けました。2)の事例は、園内での皮膚疾患治療時に膝丈のズボンを穿いていたため、異常に腫れた血管と足首に気付き魚住内科に通院後、家族の希望する病院を紹介して頂き入院しての治療となりました。

当園は、重度・最重度の入所者が多く、保護者及び兄弟姉妹も高齢化しています。病院側からの付き添い要請があったとしても現在の学園職員数及び体制では入院時に充分な手が届かないのが実態です。しかし、現実に入院問題が起きればどの様な方法でも対応しなくては入院治療が受けられないという問題が生じてきます。医療機関に対して、知的障害者をいかに理解してもらうかといった色々な働きかけと家族の努力、医師の協力体制によってしか実現しません。

本当に一般常識では考えられない様な経過がありました。

今後、新体制への流れがどうなるかはわかりませんが、どのような体制になろうとも、益々増えてくると思われる知的障害者の医療問題に対し、どの様に対応していけるかが大きな問題として残るところです。

 

〈精神科疾患者の治療〉

平成20年度は精神科の診療は前年度に引き続き、嘱託医となられた鳥巣医師により月に1度(第2木曜日)の診察が行われました。

現在73名の入所者(当初は41名が診察・投薬治療を受けていましたが7月と11月に各1名ずつ退園者がいた)39名の入所者が診察・投薬治療を受けています。現在の診療状況は医師・看護師・支援員・保護者と治療を受ける本人の5人体制で進めています。

平成20年度は、時期的に不安定になる人も出たものの、全体としては落ち着いていたと思います。今後とも、家族の協力の基に状態を把握しながら病気と付き合っていく体制で取り組みたいと思います。

 

〈歯科治療〉

入所者の歯科治療については、重度・最重度の知的障害者を持つ人達でも問題なく受ける事が出来ています。しかし、中には情緒不安定の人がいて時々騒がしい場合もあります。当園の入所者は、定期的な検診・治療のおかげで歯科に関しては問題もなく順調だと思われます。歯磨きに関しては昨年同様、本人が磨いた後に職員が磨き直しを行っています。人が生きていく上で歯はとても大切ですから今後もブラッシング指導の大切さを基本におきながら口腔衛生に力を入れていきたいと思います。

現在歯科治療で、入所者の高齢化による義歯の装着で咬み合せがうまくいかない、また装着した義歯をすぐに外し捨ててしまうといった事が問題となっています。

 

〈健康維持・管理内容〉

1)毎日実施

投薬を必要とする園生

精神科:統合失調症、癲癇発作のある人。

内科・眼科。その他、必要に応じた場合の対処。

 

2)毎週実施

@     全園生に対する検温(原則として毎週月曜日に実施)

A     血圧測定(病気により32名実施)

 

3)毎月実施

@     体重測定

A     精神科医による診察

 

4)3ヶ月に1回実施

  @皮膚病検査 

 

5)年に1回実施

@     心電図検査(35歳以上)

A     身長測定

B     委託検査

  歯科…全園生対象(4月実施)

  インフルエンザ予防接種

  精神科内服者の血中濃度検査(年2回)

C     眼科検診

D     子宮癌検診(35歳以上の女子で診察可能な人のみ)

 

6)法定検査

@     健康診断…前期・後期の全2回(前期は班別通院、後期は往診)

(成人病検査・血液検査・尿検査・血圧測定実施)

他、健康診断の結果、医師の指示のある人のみエコー検査・その他の検査を実施

A 胸部レントゲン検査…年1回前期65歳以上(県の指導より)

 

以上、計画の内容通りに実施できた。全ての結果は記録として残しています。

 

〈老齢化対策〉

重度・最重度の知的障害者の人達の健康状態を見ていると一般の人より遥かに加齢化は早いと感じます。学園全体の大きな問題点としては、重度・最重度の知的障害者を持つ人達には受け入れてもらえる専門病院がなかなか見つからず入院でき辛いという現実です。医療機関からの入院条件は本人が訴えることが分かり辛いために、学園職員もしくは家族の付き添いが必要であること、医師が患者さんに治療をするにあたって、インフォームドコンセントを行いますがその時の了解が確実に保護者の理解がなされているか、といった医療事故を防ぐための保障があるかないかといった事です。平成20年度も2名の園生を入院させましたが、益々重度の知的障害者を受け入れてもらえる専門病院の必要性を感じました。入院問題については今後も色々な問題点が生じると考えます。

保護者の方も頭の中では分かっておられるようですが、現実に我が子の問題として起きた場合は、慌てふためいた状態でどうして良いか分からなくなってしまう事が殆どです。

今までも人権尊重ということで個人情報となる個人的治療経過等の状態に関しては、各個人ごとに通知してきましたが、実際には保護者に知らせようとしてもなかなか連絡がとり辛い結果となっています。 この点に関しては保護者との会合の際に、「緊急の場合に間に合わない事が生じるため、確実な連絡先を学園に知らせておいて欲しい」と伝達して、情報の取りまとめを行いました。入所者が学園で生活する上で、個人ごとに抱えている病気等の問題については、出来るだけ詳しい情報をお伝えし、危険な状態を最大限に避けていきたいと思っております。

また、知的障害者の方々の置かれている現在の医療体制について、自分達の子どもさん(入所者)の置かれている実態をもっと知って頂く事で、保護者の皆様方のご協力を得まして今後とも進めて行きたいと考えています。

 

学園の健康管理体制

学園の健康管理体制に沿って実施。

協力医療機関及び準協力医療機関

下記の通りです。

 

 

協力医療機関

内科

魚住内科胃腸科医院

 

 

 

院長

魚住 浩

 

 

所在地

直方市頓野1919-4

 

電話番号

0949-26-6610

 

外科

西田外科医院

 

 

 

院長

西田 博美

 

所在地

直方市頓野2104-19

 

電話番号

0949-28-1573

 

精神科

りぼん・りぼん

 

 

 

院長

三原 伊穂子

 

精神科医

鳥巣 美穂

 

所在地

北九州市小倉北区宇佐町1-9-30

電話番号

093-513-2565

 

 

準協力医療機関

歯科

安河内歯科医院

 

 

 

院長

安河内 半六

 

所在地

直方市日吉町3-12

 

電話番号

0949-24-0577

 

眼科

阿部眼科医院

 

 

 

院長

阿部 健司

 

所在地

直方市溝掘2-3-13

 

電話番号

0949-22-2953

 

内科

直方中央病院

 

 

 

院長

野田 晏宏

 

所在地

直方市感田3573-1

 

電話番号

0949-26-2311

 

 

 

 

外科

西尾外科医院

 

 

 

院長

西尾 禎一

 

所在地

直方市津田町9-39

 

電話番号

0949-22-2684

 

皮膚科

おおもり皮ふ科クリニック

 

 

 

院長

大森 正樹

 

所在地

直方市感田井牟田1930-1

電話番号

0949-26-6520

 

産婦人科

田中産婦人科クリニック

 

 

 

院長

田中 康司

 

所在地

直方市頓野1000-27

 

電話番号

0949-26-8868

 

耳鼻科

岡村耳鼻咽喉科

 

 

 

院長

岡村 浩一郎

 

所在地

直方市頓野3816-3

 

電話番号

0949-22-2683

 

 

その他、園内における医療対応の変化

◎ 結核検診について

魚住医院で実施しました。(平成17年度から65歳以上のみ)

 

重度知的障害者の今後の医療的問題点

・知的障害者を診察してもらえる専門医が少ない。

・身辺自立の出来ていない、重度の知的障害を持つ人達を、入院させてもらえる病院が殆どない(精神科の病院でもなかなか入院させてもらえる所が少ない)。

・入院に際し、保護者以外に学園職員の付き添いが必要な場合、園内の職員体制が崩れ、園生全体が不安定になる。

・益々高齢化が進み、具体的に知的障害者の医療問題をどの様に解決していけば良いのか、ま

たその様な体制が出来るのか。