--- 鷹取学園20周年資料 ---


最重度知的障害で難治性癲癇発作を持つ人の施設生活適応事例

                         平成12年4月1日                            
個人別ケースまとめ担当者
                        指導員 大江芽久美
1問題であった具体的内容
 @癲癇発作
2入所年月日昭和61年12月1日入所(在園期間 12年4ヶ月)
3ケース紹介 (入所当時 福岡県更生相談所判定書より)
@ 氏名〜T・O 女性 昭和42年6月9日生まれ 32歳
A 知的面 IQ19 (愛研式) MA 3歳6ヶ月
B 生育歴〜3500gで出産。生後5ヶ月より、点頭癲癇発作出現。
     同年、小児科入院。
始歩 1年3ヶ月 始語 1年3ヶ月
昭和48年、6歳時 レンノックス症候群と診断される。
      気管支喘息あり。
昭和 62年12月 鷹取学園入所
C身辺自立状況 食事、排尿は大体自立。排便、着脱衣は指導・介助を要し、入浴、           
       生理は全介助を要す。
D更生相談所の判定所見
(医学判定)
(心理学判定)難治性癲癇の為、行動は不活発。また、肥満傾向にもある為動作は
        緩慢さが目立つ。一語文の発語があり、本人から好意的に抱き着
        くなどの関わりを求めてくる。
(職業的判定)職業的な可能性は低いが、訓練である型はめには近年上達が見られ    
        だし、本人の興味の幅を広げる事が先決ではないか。
(総合判定)最重度

4入所当時の状態
癲癇発作(レンノックス症候群)を持つ最重度の知的障害者が施設生活に適応出来るのか?という疑問と不安を抱えながら、入所当日は、看護婦さんと母親に両腕を支えられ学園の門をくぐり学園生活をスタートする。その背景には、入所以前は、南福岡病院のこばと2病棟で殆どベット生活であったTさんの両親が、「もっと人間的な生活を」という強い願いで鷹取学園に入所する事を決意がされている。そして今、難治性癲癇発作を持つ女性が、75名の園生と共に生活している。その健闘ぶりとも言える彼女の13年間を振り返りながら現在の姿をとらえていきたい。

5指導・訓練方針と基本的考え方
 最重度の難治性癲癇発作を抱えたTさんであるが、学園の日課には体力的に無理が生じない程度に沿わせていくようにする。また、日課の中での本人の楽しみを一つづつ増やしながら学園生活が有意義なものとなる事を目指す。

年度毎の在日学園日数と癲癇発作の回数


在日日数
発作回数
入所1年目
65日
99回

214日
232回

202日
256回

213日
316回

218日
253回

214日
164回

239日
166回

229日
103回

221日
81回
10
250日
113回
11
239日
168回
12
235日
178回
  13
 230日
 115回
  14
 238日
 116回

6経過

昭和61年度
12月入所。入所当初は、声掛け、部分介助で日課にはスムーズに取り組めている。反面受身的であり行動的ではない。午後は眠気が強い。
訓練班〜機能回復指導U班(訓練内容は、主に体力つくりの為の散歩)  

昭和62年度
学園内のトイレ、居室の場所を覚え一人で行動するようになる。排泄も本人で出向くようになってくる。訓練での散歩が効果を示し、歩行自体に慣れ始める。11月28日園内マラソン大会では自力で走っている。ゴール前、20メートルを勢い良く駆け抜け皆を驚かしている。
訓練班〜機能回復指導T班(訓練内容は、名札かけ、型はめ、ビーズ通し、散歩)

昭和63年度
日常の生活面で行動範囲の広がりが見られ出す。年度末には、居室での一人遊びに飽きると、気に入りの場所(ディールーム)に出向くようになる。本人の意思もはっきりと現れるようになり不機嫌・我侭が目立つようになる。「だめ、いやよ」との返答が度々返ってきている。
訓練班〜機能回復指導T班(訓練内容は、名札かけ、型はめ、散歩)

平成元年度(年間クラス纏め 資料@
4月当初、初めてのクラス替え、担当も変わる。その事から精神的不安定となり体調を崩す。7月まで下痢便が続く。我侭は調子が良い時の本人の意思表示として現れる。日課拒否は説明を加えながら時間をおいて誘導することで本人も応じることが出来ている。
訓練班〜機能回復指導T班(訓練内容は、名札かけ、型はめ、散歩、リラクゼーション)

平成2年度(年間クラス纏め 資料A
4月、居室の入れ替えがあったこともあり、ストレスから体調不良となる。下痢便が目立つ。夏ばても感じられるが日課には沿えている。本人の意思表示もしっかりとしてくる。
訓練班〜機能回復指導T班〜名札かけ、型はめ、散歩)

平成3年度(訓練班年間纏め 資料B
クラスメンバー、居室が変わらず精神的な下痢便は見られない。日課には誘導を要すが指示には大体従えている。入浴前の拒否「いや、だめよ」という返事が多くあっている。訓練では、コーヒーの催促がありポットを持ち出したりと意思を伝えようとする場面が増え、本人の行動範囲が広がっている。
訓練班〜機能回復指導T班(訓練内容は、名札かけ、型はめ、散歩、リラクゼーション)

平成4年度(年間クラス纏め 資料C検索
本人の意思表示がはっきりとしてきたが、我侭も目立つようになってきた為、生活の中での約束事を学ばせる指導方針を取る。指示には、時間をおくことで素直に聞き入れる事が出来ている。余暇は居室で過ごすことが少なくなり、絵本を持ってディールームに出向く事が見られている。体調の悪いときは、、自ら静養室の布団を引っ張り出して休もうとする行為も見られる。また、内面的な成長として、他園生(○○さん)に関わるようになる。職員とのマンツーマンの関わりが主であった為、交友関係の大きな変化である。園内行事についても発作が減少傾向、本人も楽しんで参加するようになる。
訓練班〜機能回復指導班(名札かけ、型はめ、散歩)


平成5年度 検索
昨年同様、余暇はディールームで過ごすことが多い。日課への取り組みは時折、我侭的な言動があるが、説明を加えることで聞き入れることが出来ている。園内行事も、周りの雰囲気を感じ取り本人も楽しめるようにまでなっている。
訓練班〜機能回復指導班(名札かけ、型はめ、支柱立て、散歩)

平成6年度(年間クラス纏め 資料D検索
居室の移動はないが、担当が変わった事で下痢便が見られる。長期帰省後、眠気が強く学園生活に慣れるまで時間を要す。余暇は、自らディールームに出向き、他園生に混じっている場が多く見られる。
訓練班〜機能回復指導班(訓練内容は、名札かけ、型はめ、支柱立て、散歩)

平成7年度 検索
担当、居室と変わらず4月も落ち着いた状態。一時、家庭の方で父親が単身赴任などがありペースが乱れるが2ヶ月ほどで体調は戻っている。余暇は、カセット使用が主でDRには気が向いたときのみ出向いている。
訓練班〜機能回復指導班(訓練内容は、名札かけ、型はめ、支柱立て、散歩)

平成8年度 検索
担当が変わった事で不安定さが窺え、下痢便が見られる。本人の行動範囲は、好きな場所に偏る傾向があり医務室・静養室が主である。同室の△△さんがテレビを見ている際は、本人が居室にいづらいようで職員で配慮しながら両者の関係を見ている。日課での拒否は時折あるが、声掛けを行いながら取り組ませている。
訓練班〜機能回復指導班(訓練内容は、名札かけ、型はめ、支柱立て、散歩)

平成9年度 検索
担当・居室・メンバーもほぼ変わらず精神的な崩れは見られない。本人の楽しみは週に一度の自販機使用、帰省である。帰園した日は活気がない日が殆どである。昨年見られた医務室行きは殆ど見られない。
訓練班〜機能回復指導班(訓練内容は、名札かけ、型はめ、支柱立て、散歩)

平成10年度(年間クラス纏め 資料E検索
4月、風邪気味である事に加え、担当・メンバーが変わった事・家庭での変化が伴い体調を崩すこととなる。(月纏め4月 資料F)糸井先生の指示にて投薬変更となる。(一日4回の与薬が一日3回となる)投薬変更に伴い、はっきりとした意思表示が表に出てくるようになり、意思を伝えようとする言葉が多く聞かれる。また、その後の長期帰省後より学園での食事で拒否が多く、主食には手を付けない、主にフルーツ類を摂取するようになる。主食に手を付けない為、ふりかけを使用して対応している。(5月月纏め 資料Gチェック表H)夏過ぎより食事摂取状況は徐々に良くなり、年度終わりには問題ない。3月、足元のふらつきが3日程続く。園内行事は楽しみの一つとなり発作もなく元気に参加出来ている。
訓練班〜機能回復指導班(訓練内容は、名札かけ、型はめ、支柱立て、散歩)

平成11年度 検索
居室・担当と変わらず、メンバーは一人の入れ替えであり精神的崩れはなし。変わったメンバーの◎◎さんには好意的であり、誘導の際は素直に聞き入れる事が出来ている。園内行事では、特に社会参加訓練を楽しみにしているようで、街では大声が出るほどの活気が出る。一年間、体調を大きく崩す事はなかった。
訓練班〜機能回復指導班(訓練内容は、名札かけ、型はめ、支柱立て、散歩)

7改善点
@ 癲癇発作〜入所6年目より発作が減少。(別紙年度別グラフ資料1年度月別グラフ資料2参照)
8改善に至った理由
 精神科嘱託医による毎月の診察を経て、学園生活を送る為のアドバイスを受け、投薬面での効用がある。
9まとめ
 最重度知的障害者で難治性癲癇発作を持つTさんの学園生活を早足でたどってきたが、入所して12年経った現在ではかなりの充実ぶりが窺えているのではないだろうか?実際、家庭の方では、衣類の着脱・洗濯物を籠に移すようになる等の成長ぶりを肌で感じておられる。また、学園生活で楽しみにしている自販機使用も、クラスの皆と一緒に購入し良い雰囲気の中実施できている。訓練では型はめ作業を行い●・▲・■の判別が可能になっている。本人からの言葉が多く、本を読む時など好きな場面になると大喜びして吹き出す程である。最近ではお喋りするぬいぐるみを気に入り、現在その言葉を覚えているところである。
 こうして、Tさんの少しづつの成長ぶりを感じながら、充実した学園生活を送れるように心掛けていきたい。




この頁は、鷹取学園20周年CDROMにあるWORD文書を、自動HTML変換して作成したものです。
リンクの行き先等の変換ミスにお気付きの場合は、下記までおしらせください。
                     〒822−0007 福岡県直方市大字鬼ヶ坂336番地の11
                     社会福祉法人 福知の里   知的障害者更生施設 鷹取学園
                      TEL 0949-24-6622   FAX 0949-24-8333
                      EMAIL takatori@enissi.com