--- 鷹取学園20周年資料 ---
染色班
担当責任者 田畑 亜美
1. 班の成り立ちと経過
昭和57年度、集中力、注意力、持続力、創造性を養い、手指の巧緻性を高める事を目標と
し、まずは「手芸班」としてスタートしました。当所の作業内容は段通(パイル織り)、刺し子、スウェ
ーデン刺繍等の作品作りを行なっていました。学園が始まったばかりであったので、誰がどの
作業に適しているかを、いろんな作業を体験させ、作業能力を見極める為の手段として、1 時
限ごとに2〜3名の園生をピックアップし、主に段通作業を通じて各園生の作業能力の把握と、開
発を行なってきました。年度毎に園生の入れ替えもあり、その為、能力に合わせた作業内を
色々と思考錯誤しながら取り入れた為、内容変更も多々ありました。現在の染色班は昭和57
年度から平成元年までの手工芸班と、昭和63年度に出来た「軽作業1班(草木染作業)」[翌
年、班名変更で軽作業2班となったもの]が平成2年に合体し、「軽作業2班」という一つの
班となったものです。「軽作業1班」とは、当所は、作業班と機能回復訓練班との中間に位置
づけられた軽作業班として開設されたもので、学園周辺の草や木を利用しながら、「創造する
喜びや感動を覚える」といった理由で、草木染作業を始めました。草木染め作業にしぼられ
た事で、作業内容としては作品の種類は少なくなり、草木染めのレターセット、ハンカチ等が中心とな
ってきました。平成2年度には化学染料での絞りも加え、絞り作業を行なう傍ら、園生の能
力にあわせた粘土作りなども行なって来ました。平成7年度より「染色班」となり、この年
より本人達の作業適性を更に伸ばす為に、作業・訓練対象者の洗い直しを行い、各班の作業適
性にあったメンバー構成となり現在に至っています。
2.作業主旨・目的
以前は、男子園生も一緒に行なっていましたが、年々、作業内容が女性らしさを追求する縫
い物・染め物が中心となってきたことに伴い、現在では、女性10名、女子指導員2名という
女性ばかりの班で構成される事になりました。メンバーは癲癇・言語障害・ダウン症・聴力障害等
を持つ園生を中心としています。
作業内容は化学染料を使った絞り染め作業が中心で、運針・絞り・染色・絞り解き、といった流れ
で取り組んでいます。各々のペースにもよりますが、一つの作品を仕上げるまでに早くて一週間、
遅くて2、3ヶ月程かかります。毎日、どんな色、どんな模様に出来上がるのかを頭の中で想像し
ながら、失敗にもめげず、楽しみながら励んでいます。各工程において一人一人出来る範囲が違う
為介助もさまざまですが、職員の手が入りすぎる事なく、難しい工程での絞りに関しては本人の出
来たなりの内容で作品とする様にしています。一方で技術は上達してほしい為、見本を示して説明
などを行いながら進めていく様にも心掛けています。やり直しを繰り返しながら、頑張って作れば
作る程完成時の喜びは大きく、さらにみんなの前で発表し、みんなに感想を言ってもらう事で自信
をつけています。また、花公園への依託販売を行なう事で作品作りへの意欲につなげています。作
業を行う事で情緒安定を図ったり、物を作る喜びを感じさせ、作業に対する責任感を育む事を大切
にしていきたいと思います。
3.メンバー構成 平成12年4月1日現在
園 生
性 別
年齢
IQ
M A
判 定
障 害 内 容
M・M
女
39
11
1歳11ケ月
最重度
言語障害
S・M
女
37
13
2歳3ケ月
重度
自閉症・癲癇・言語障害
H・S
女
45
31
4歳11ケ月
重度
ダウン症・白内障・心臓疾患
N・Y
女
37
35
6歳2ケ月
重度
癲癇
O・N
女
34
31
5歳6ケ月
重度
癲癇(レンノックス症候群)
Y・M
女
43
32
5歳8ケ月
重度
ダウン症
K・K
女
31
25
5歳6ケ月
重度
癲癇(レンノックス症候群)
Y・A
女
21
測定不能
不祥
重度
癲癇・右痙性片マヒ
N・K
女
60
21
3歳9ケ月
重度
聴力障害
N・T
女
49
43
7歳8ケ月
中度
聴力障害・糖尿病
写真)作業風景〜絞り染め作業 写真)染色作業
4.作業内容・工程
『草木染め作業』
(1)草木採取 →(2)染料作り →(3)煮染め →(4)すすぎ →
(5)媒染 →(6)すすぎ →(7)煮染め →(8)すすぎ →
(9)脱水・乾燥 →(10)完成
『絞り染め作業』
(1)絞り図案作成 → 作りたい図案を箱の中より選んで来る。配置は職員で行い、図案
と布を待ち針で止め写す。(要介助者3名)
(2)運針 → 針目に大きなばらつきのある園生、返し縫いのある園生に関しては、描き
写した図柄に点線を打ち運針していく。(要介助者5名)
(3)色決め → 模様により何色にするのか、何色使用するかを決める。
(4)絞り → 布寄せ、裏の布の巻き込みの確認、固結び、巻き上げ、固結びの順に行う。
(5)煮染め → 決めた色をもとに化学染料で染める。
(6)すすぎ
(7)脱水・乾燥
(8)絞り解き → はさみで一つずつ慎重に解いていく。(要介助者5名)
(9)アイロンかけ
(10)製品化
5.作品紹介
絞り染め作品 … ハンカチ、バンダナ、巾着、風呂敷、食器掛け
・草木染め作品 … ハンカチ、膝掛け
・その他の作品 … 刺し子のコースターなど
写真)巾着 写真)バンダナ
6、班の資料
年度
作業内容
担当者
備 考
昭和56年
昭和57年
段通(パイル織り)
木村
手芸班
昭和58年
段通、刺繍
木村
手芸班
昭和59年
スウェーデン刺繍、刺し子、クロス刺繍、段通
木村
手芸班
昭和60年
刺し子のれん、ポケットティッシュカバー
木村
手芸班
昭和61年
スウェーデン刺繍、刺し子、クロスステッチ、夢刺しクッション
木村
手芸班
昭和62年
ポプリ作品、スウェーデン刺繍、刺し子
木村・江原
手芸班
昭和63年
手芸班〜スウェーデン刺繍、刺し子、アンデルセン手芸
軽作業1班〜草木染め、オーブンクレイ、自然薯
手〜江原
軽1〜立木・仲谷
手芸班
軽作業1班
平成1年
手芸班〜手織物、
軽作業2班〜草木染ハンカチ、レターセット、裂布敷物
手〜江原
軽2〜仲谷・波多野
手芸班
軽作業2班
平成2年
草木染め、裂布作品、化学染料の絞り
仲谷・波多野
軽作業2班
平成3年
裂布、裂布布結び、スウェーデン刺繍、化学染料染め
仲谷・安村
軽作業2班
平成4年
草木染めレターセット、化学染料染め、刺し子
セラミック粘土(ボタン)、石粉粘土工芸、裂布作業
仲谷・三谷
軽作業2班
平成5年
草木染め・化学染料染め、刺し子、パッチワーク
粘土工芸、刺繍、藍染め
仲谷・三谷
軽作業2班
平成6年
粘土工芸、石鹸作り、化学染料染め、草木染め刺繍、パッチワーク、紅花染め
仲谷・三谷
軽作業2班
平成7年
草木染め、化学染料染め、巾着、版染めハンカチ
仲谷・三谷
染色班
平成8年
草木染め、化学染料染め、刺し子
仲谷・河上
染色班
平成9年
草木染め、化学染料染め、刺し子
田畑・大西
染色班
平成10年
草木染め、化学染料染め、刺し子、紅花染め
田畑・大西
染色班
平成11年
草木染め、化学染料染め、刺し子、紅花染め
田畑・大江
染色班
7.班のあゆみ
染色班は昭和56年度の学園開所以来からの手芸班が前身で、女子職員2名に園生は男子1名、女子9名でスタートし、主に段通による作品作りを行っていました。YさんとSさんの2名が予想を上回るほど上手で、玄関マットなどを作っていました。
昭和57年度
女子指導員を1名と男子2名、女子9名の11名で活動しました。この年は8班の構成で、手芸班は作業指導に至る前の準備段階にあたるグループの班として位置づけられ活動しました。また全園生に対して、いろいろな作業体験をさせるという指導方法をとった年でした。多くの人を対象とした班となり、作業内容としては、雑巾縫いからスウーェーデン刺繍と幅広く行うも、多人数の園生が出入りする形になり、作品としては少ない状態でした。
昭和58年度
この年からは手芸を更に充実させるため、@段通 A刺し子 Bスウェーデン刺繍 Cクロス刺繍 D毛糸編みの作業を行い、それぞれに適した内容を探るという状態でした。
段通では座布団と玄関マット、壁飾り等を作り、刺し子によるテーブルセンターやのれんを作りました。班としての売り上げは38,300円でした。班のメンバーは女子ばかりの8名となりました。
昭和59年度
今年度はポケットティッシュカバー(スウェーデン刺繍・クロス刺繍)、テーブルセンター(スウェーデン刺繍)、玄関マット、座布団カバーを作製しましたが、どれも予定した数を下回る状態でした。作業については、大まかなことは大体できるようになりましだか、細かい部分の指示は必要でした。メンバーについては昨年と同じです。
昭和60年度
班のメンバーは女子6名となりました。内容に変化はありません。ただ、当初の生産量の見込み違いから、思ったよりもかなり少ない完成数となりました。
昭和61年度
作業の内容はスウェーデン刺繍によるボケットティッシュカバー、刺し子ののれん、刺し子袋と大きな変化はありません。今年度より各人に責任を持って作業を行うという意識付けを図る為、1人1人に各作業を完成させるまで行うというように方針を変えました。しかし、最終的な仕上げは職員が行っています。
昭和62年度
この年より担当職員が女子2名となりました。作業の内容はスウェーデン刺繍のエプロン製作とペンケース作製、刺し子のクッション、座布団カバー製作といった従来のものにポプリを使用して、におい袋や石鹸、瓶詰めのポプリの製作も始めました。
昭和63年度
今年度は担当職員が1名退職した事により、2名から1名になりました。その関係で昨年実施した、ポプリの作業はしないことになりました。その代わりに「あんでるせん手芸」を新たに始める事になりました。内容は、広告の紙を適当に棒状に切り、棒状にした紙を編んで、ごみ箱、ランドリーボックス、小物入れを作るということです。その他に和紙を使用した作品をつくることも始めました。その他の作業は変わりはありません。
平成1年度
担当としては3年目を迎えました。作業内容はスウェーデン刺繍と刺し子に作業を絞り、進める事になりました。母親ボランティアの力を得て、よい作品を作る事ができました。園生も同じ作業の繰り返しという事で、かなり慣れてきており、少しずつですが、進歩しているように思われます。
平成2年度
今年度はスウェーデン刺繍で、巾着とパッチワークでポーチをつくることに重点をおき、あんでるせん刺繍のカゴ、ランチョンマットも同時に作製しました。また材料が不足した場合は古いタオルを利用して、雑巾を縫うということも作業に取り入れ、休むということのないようにしました。
しかし、手芸班が現在の染色班の流れを汲んでいるわけではなく、この年から軽作業U班(染色作業)として編成された班が、後に染色班となるわけで、以後は名称を軽作業2班(染色班)と呼んで進めていきました。この年は担当職員女子2名、園生は男子4名、女子4名という編成でスタートし、対象とした園生は分裂、てんかん発作を持つ人、ダウン症及び行動の遅い人を対象に班編成がされました。
作業の内容は草木染め、裂き布を主な物とし、草木染めについては、紙と布を対象に進め、紙染めは、便箋と封筒作りに徹しております。布の作品としてはまだスタートしたばかりであり、作品の数そのものは少ない状態でした。
平成3年度
この年も軽作業2班(染色班)として活動をしています。メンバーは男子4名、女子5名の9名でスタートしました。作業内容は草木染めのレターセット、はがきセットや手染め、絞り染めのTシャツやハンカチなどを作製しました。スウェーデン刺繍、刺し子作業も復活させ、風呂敷きや巾着等をつくり、班としての売り上げは304,321円ありました。ようやく軌道に乗り始めたと言えるのではないでしょうか。
平成4年度
メンバーは昨年度と同じで、男子4名、女子5名の9名の編成です。作業の内容を少し変化させるために、セラミック粘土を使いオーブンにて焼き、飾りボタンやブローチ等を作製しました。
その他粘土を使用して、バスケットや小物入れも作製しました。その他手染めで、のれんと風呂敷きを草木染めでは、ハンカチ、ポケットチーフ、コースター、巾着、ランチョンマット等を作りました。
平成5年度
メンバー編成は昨年と全く同じです。この年は個人個人に役割を持たせ、一つの作業を完成までに至らせるということを目標に作業を進めました。そのために個人個人に道具を持たせ、自分で管理をするという責任感を持つような方法をとりました。作業の合間にはコーヒータイムをとりいれることにしました。このコーヒータイムというのが、意外に作業を進めるうえ。このコーヒータイムというのが、意外に作業を進めるうえで役立ちました。藍染めによるハンカチとシヤツは好評でした。
平成6年度
今年度は女子の園生が1名増え、総勢10名となりました。新しい作品をとアームカバーにワンポイントの刺繍を入れたり、パッチワークでマットを作製したり、学園で栽培した紅花でスカーフやハンカチを染めてみました。その他石鹸作業を復活させ、溶かした石鹸を色々な形に流し込み、園生は十分変化を楽しんだように思います。園生の皆さんもかなり自信をつけたように思います。
平成7年度
担当職員も技術の向上が必要です。学園での仕事が終って染め物のプロに教えを乞うということを続けました。それによりかなり自信を持つ事ができるようになりました。
今年度はやや班編成が変わり、男子1名に女子8名となりました。
のれんの絞り染めは介助をしなくても一人でできるまでになった人もいます。絞りぞめをしたもので日傘の作製もしました。一つの作品を完成するにあたって、最初から最後まで一人で行うということに重点をおいて指導を進めましたが、そのことがかなり皆にとって自信が深まったように感じられます。
平成8年度
今年度は化学染料を使った絞り染めと並行して、自然の素材を生かした草木染めにも力を入れて取り組んでいます。草木染めの材料は学園周辺の植物を採取した物や、当園の園芸班で栽培しているべに花を主に使用しています。植物採取→染料作り→染めに至るまで職員と園生が協力して行い、、みんなの努力の結晶といった作品に仕上がります。どの作品も根気が必要ですが、世界に一つしかないオリジナリティーあふれる作品として評価し、毎日楽しく取り組んでいます。
平成9年度
今年度は担当者が2名とも替わった事で、職員が技術を覚えるまでに時間がかかり、その間、園生も介助待ちとなり暇を持て余す事もありました。一学期を過ぎるとようやく職員が理解出来て来た事で、園生も安心し作業を行う様になりました。班編成では今年度新しく女子8名となり、職員も含め女性という事で、運針という作業内容から幅広く作品作りに至るまでといったところでした。女性らしさを大事に?して来ました。作品はハンカチ、バンダナ、巾着などの小物を中心に作っています。
平成10年度
今年度も昨年同様、化学染料を使った絞り染めと草木染め作業を行っています。作業中はお喋りや歌を歌いながら行う園生、集中している園生と様々ですが、なごやかな雰囲気で行う事が出来ています。作品作りも絞りの風呂敷きやふきん、ランチョンマットなどの新しいものを取り入れました。思った以上に学園祭の販売では好評だった事で、園生も自信がついた様で喜んでおり、次の作品作りへの意欲につながった様です。
平成11年度
今年度、新しく2名加わり女性10名で編成されています。作業内容は化学染料を使った絞り染め、草木染め、紅花染めの他に新しく藍染めにも挑戦しました。藍染めは初めてという事で園生に教えるまでには至らず、職員が中心となりましたが、色が染まると感想を話してくれたり、一緒に喜んでくれる等、興味は十分ある様です。また、自分の作品が完成するとみんなの前で発表し、感想を言い合う事で、作業意欲も生まれている様です。みんなから褒められる事は嬉しい為か、他の班まで見せに行っており、声を掛けられる事を喜んでいます。他の班とは違い、一つの作品を最後まで自分で仕上げる為、出来た時の喜びは大きく、作業へも一段と熱が入り取り組む事が出来ています。
年度毎の収入
収 入
主な作品名
昭和58年
38,300
座布団カバー・袋・テーブルセンター
昭和59年
120,954
ポケットティッシュ、座布団カバー・刺し子作品
昭和60年
127,800
ポケットティッシュカバー・刺繍のれん・
昭和61年
39,630
ポケットティッシュカバー・刺繍手さげ・刺繍ポーチ
昭和62年
43,500
ポプリにおい袋・刺繍ポーチ
昭和63年
158,650
エプロン・刺繍ポーチ・ティシュカバー
平成元年
330,160
ペンダント・刺繍巾着・サロンエプロン・刺し子巾着
平成2年
274,365
草木染めハンカチ・日傘・スカーフ・レターセット
平成3年
304,321
草木染めスカーフ・サテン・レターセット・巾着・ネクタイ
平成4年
188,770
草木染めレターセット・ハンカチ・巾着・スカーフ・粘土クリップ
平成5年
535,697
草木染めハンカチ、ポケットチーフ・刺し子コースター
平成6年
302,860
草木染めハンカチ・紅花スカーフ・草木染めレターセット
平成7年
426,147
絞り染め日傘・のれん・巾着・ポケットチーフ
平成8年
258,253
絞り染めハンカチ・巾着・草木染めハンカチ・刺し子コースタ
平成9年
126,030
絞り染め巾着・ハンカチ・日傘・スカーフ
平成10年
113,838
絞り染めバンダナ・巾着・ハンカチ・草木染めスカーフ
平成11年
99,712
絞り風呂敷・ハンカチ・草木染めスカーフ・刺し子コースター
写真)ハンカチ 写真)風呂敷
写真)刺し子運針
8
この頁は、鷹取学園20周年CDROMにあるWORD文書を、自動HTML変換して作成したものです。
リンクの行き先等の変換ミスにお気付きの場合は、下記までおしらせください。
〒822−0007 福岡県直方市大字鬼ヶ坂336番地の11
社会福祉法人 福知の里 知的障害者更生施設 鷹取学園
TEL
0949-24-6622 FAX 0949-24-8333
EMAIL takatori@enissi.com