--- 鷹取学園20周年資料 ---
和 紙 班
担当責任者 三 宅 市 郎
1.班の成り立ち・経過
昭和57年度当初は、難治性てんかんをもつ人・自閉傾向にある人を中心に、手先を使う作業として「紙工芸班」の名称で出発した。次年度の58年度には、名称が変わり「生活指導訓練2班」として紙工芸の作業内容が取り組まれ、作業を行なう事で情緒の安定を図ったものであった。59〜62年度の間は再度「紙工芸班」として位置付けられ、60年度12月より重度棟が開設され重度・最重度者増員があり、63年度より大幅な班の再編成が行われた。その中で集団生活に馴染めず、興奮してパニックを起こし、自他傷行為・器物破損などの行動障害を持った園生(自閉的・情緒障害・精神分裂的傾向にある男子園生6名)を、「情緒の安定」と「問題行動の緩和」を第一の目的として作業を進めるという新しい試みに取り組んだ。こういった理由で平成元年に「軽作業1班」ができ、作業内容の選択にあたっては、単純作業ながら楽しく行えるもの、工程が分担でき、それぞれが独立して単独で行える内容に重点を置いている。作業内容としては、牛乳パックを利用した再生和紙作りを始め、以降も同作業を中心に行い、平成4年度には缶つぶし作業も導入している。この事で若いエネルギーの発散に加え、車に執着する園生に対して、年に1度の業者への空き缶移送時に同伴させる事で、楽しみを与えるといった場面設定にも配慮している。平成7年度には「和紙班」と改称し、平成10年度からは品質向上の為に八女伝統工芸館より和紙原料(楮・三椏・パルプ)を購入し、新たな技術を加え、情緒の安定を基本としながら、より良質な和紙作りに励んで来た。作品は園内行事を始め、福智山麓花公園に出品販売しながら、更に園生の自信・やりがいに繋がるような方針で取り組んでいる。
写真)作業風景(手作り和紙)・展示販売
2.作業主旨・目的
当班は園内で特に情緒的に不安定で、問題行動を持つ園生を中心として構成されている。生活の中で消化できない精神的な部分を作業で発散させる事に重点をおき、情緒の安定と問題行動の軽減を目標として取り組んでいる。その際、個人の能力が異なる為、作業内容も配慮する必要があり、この点に付いては、身体的なハンディも含め一人一人にあった「作業補助具」を使用する事にしている。また作業の中で連携を取らせる方法で、他園生との横のつながりを確立していき、協力し合いながら進めており、情緒の安定という目標の上に、技術面の向上を目標とする園生も増えてきている。作品販売を利用して園外へも足を伸ばし、一般社会と本人達の作品との繋がりを意識付ける事により一人一人が自信を持ち、一段階ずつステップアップできるよう努めていきたいと思っている。
3.メンバー構成 H12,4,1現在
園生
性別
年齢
I・Q 知能指数
M・A 精神年齢
判 定
その他の障害
O・T
男
31
19
3歳0ケ月
最重度
脳性麻痺・非定形型精神病言語障害・下半身麻痺
N・H
男
31
22
3歳6ケ月
最重度
自閉症
N・A
男
36
15
2歳8ケ月
最重度
自閉症・言語障害
H・T
男
46
21
3歳4ケ月
重度
ダウン症・円錐角膜 白内障・眼球振とう
M・H
男
36
22
3歳10ケ月
重度
癲癇・言語障害
M・T
男
37
15
2歳9ケ月
重度
背骨湾曲・分裂病
K・M
男
31
16
2歳9ケ月
最重度
自閉症・言語障害
U・A
男
32
15
2歳8ケ月
最重度
自閉症・言語障害
N・Y
男
20
11
1歳9ケ月
最重度
癲癇・言語障害
N・M
女
40
8
1歳5ケ月
最重度
分裂病・言語障害
I・E
女
19
13
2歳0ケ月
最重度
非定形型精神病・言語障害
写真)作業風景(空缶つぶし)
4.作業内容・工程
● 和紙作成 ●缶つぶし
@ 牛乳パック解体 @缶収集
↓ ↓
A 切ったパックをお湯で煮る A缶洗い
↓ ↓
B ビニール剥ぎ B缶選別
↓ (アルミ缶とスチール缶)
C 紙切り ↓
↓ C袋積め(アルミ缶のみ)
D 切った紙と和紙原料(楮・三椏・パルプ) ↓
を1:1で計量 D業者へ搬出
↓ (年2回)
E 和紙漉き
↓
F プレス掛け
↓
G ステンシル他絵付け
↓
H 完成
5、作品紹介
和紙はがきセット(5枚組み) \300
和紙便箋・封筒セット \300
(普通便箋2、小便箋1、封筒1)
写真)和紙はがきセット 写真)和紙便箋・封筒セット
6.班の資料
年度
作業内容
担当者
園生数(男女)
備考
S57
ちぎり絵
花田
5
6
紙工芸班
S58
〃
〃
8
3
訓練2班
S59
紙工芸
〃
3
2
紙工芸班
S60
〃
〃
3
3
〃
S61
〃
〃
3
3
〃
S62
〃
花田・田原
4
4
〃
S63
和紙作り・薯栽培
立木・仲谷
5
4
軽1班
H 1
和紙作り
立木・田原
6
0
〃
H 2
〃
立木・田原
6
0
〃
H 3
〃
白土・山内
8
2
〃
H 4
和紙作り・缶つぶし
浜村・山内
8
2
〃
H 5
〃
浜村・浜田
8
2
〃
H 6
〃
浜村・松本
8
2
〃
H 7
〃
浜村・三宅
9
2
和紙班
H 8
〃
三宅・椎木
9
1
〃
H 9
〃
三宅・大江
9
1
〃
H10
〃
原 ・三宅
9
1
〃
H11
〃
三宅・高宮
9
2
〃
7.年度別売上状況
年度
班名
作品売上金
缶つぶし数量
缶つぶし売上金
S57
紙工芸班
0円
S58
訓練2班
12、350円
S59
紙工芸班
53、810円
S60
〃
52、290円
S61
〃
136、140円
S62
〃
240、000円
S63
軽1班
320、110円
H1
〃
29、284円
H2
〃
197、500円
H3
〃
182、360円
H4
〃
11、250円
H5
〃
32、400円
168kg
5、099円
H6
〃
12、510円
233kg
12、000円
H7
和紙班
18、350円
240kg
13、483円
H8
〃
41、483円
225kg
10、429円
H9
〃
44、400円
344kg
27、090円
H10
〃
33、608円
667kg(2回分)
45、549円
H11
〃
46、002円
665kg(2回分)
26、198円
8.班の歩み
昭和57年度(作業内容〜モザイク貼絵作成)
紙工芸班という呼称でスタートしている。@色の弁別の確立、A色彩感覚を養
う、B注意力・集中力・創造力を養う、Cはさみが使えるようになるという4
つの目標を立てて進め、はさみが使えない人にはハンドグリッパーを利用する
など簡単なモザイク貼絵を完成させ、作品としていた。
昭和58年度(作業内容〜紙粘土)
訓練2班。対象者が生活班からという事で、作品は紙粘土そのものを作るのを
目的とした。後期には空瓶を利用しての作品作りであった。個人の中で伸びの
あった園生は見受けられる。
昭和59年度(作業内容〜パルプ・カレンダー作り)
紙工芸班。個々人にあった作業内容の充実を図り、はさみを使える人は切る作
業で能力を伸ばして行くように配慮した。
昭和60年度(作業内容〜紙粘土、コースター、カレンダー作り)
紙工芸班。紙粘土はブローチ・キーホルダーに、コースターはベニヤ板にタイ
ルを貼り付けた物を作成。カレンダーは障子紙を使用して作った。作品の仕上
げが園生では出来ず、職員が行なう様になってしまった。
昭和61年度(作業内容〜紙粘土、コースター、カレンダー、ペーパークラフト作り)
紙工芸班。昨年度の作業内容に加え、ペーパークラフト作り(広告紙によるか
ご作り)を行なう。作品の内容そのものは充実してきており、少しずつ園生も
ペースがつかめてきた。
昭和62年度(作業内容〜紙粘土細工、あんでるせん刺繍、カレンダー、レターセット)
紙工芸班。男子指導員という事で、S・Mさんのラポートをとるのに時間が掛
かった。色々な種類の作業に取り組んだが、種類が多すぎ絞り込む事が出来な
かった。
昭和63年度(作業内容〜薯栽培、草木染め)
軽作業1班。栽培用の専用機材を使用した土入れ作業やイボ竹設置作業を熱心
に行なうようになった。草木染めでは手作りネクタイ・絞りハンカチ・レター
セット・ハガキセットを製作した。
平成1年度(作業内容〜自然薯作り、和紙作り)
軽作業1班。7月まで薯作りが主であった。8月より和紙作りに取り組む。始めは全
員がパック破りを行なう毎日であったが、一通りの工程を全員に行なわせる事で、そ
れぞれの割り当てを決めていった。
平成2年度(作業内容〜自然薯作り、和紙作り)
軽作業1班。自然薯作りは4月の種苗植え付けの遅れや、土が山砂交じりの土で成育
が遅れ、殆ど収穫できなかった。その分和紙作りを集中して行なう様になった。役割
分担もほぼ決まり、それぞれの持ち場をこなすようになった。
平成3年度(作業内容〜和紙作り)
軽作業1班。班担当者が始めてで、大き目の和紙作りから行なう。作業行程を細分化
して、「作品作りの意識付け」という事に重点をおいて指導する。
平成4年度(作業内容〜和紙作り、缶つぶし)
軽作業1班。今年度より空缶つぶし作業を始める。また作業環境整備を位置づけ、各
園生にあった道具探し、道具製作、新しい器具購入を実施。役割を細分化した事で、
個々の作業の自立化が図られた。
平成5年度(作業内容〜和紙作り、缶つぶし)
軽作業1班。和紙作り・缶つぶしの両工程の中で、一連の流れとしてつながりのある
コンビネーション作業を実施。昨年同様、新たな道具を製作して作業技術の成長を図
っていった。
平成6年度(作業内容〜和紙作り、缶つぶし)
軽作業1班。昨年までで大体補助具等の器材が充実してきて、今年度もより進歩した
コンビネーション作業(つながりのある作業)を継続していった。作業工程が定着し
た事で、園生個人個人が安定して来ており、作業にも意欲的に取り組めている。
平成7年度(作業内容〜和紙作り、缶つぶし)
和紙班。園生・職員の入れ替わりがあり、和紙作りにおいて技術的に伸び悩んでいた
が、ミキサーを払うなどの問題行動が見られていたO・T君が缶洗いを通じて昨年よ
り安定するなど、一人一人の特性を引き出す事と園生間の連携に力を入れていった。
平成8年度(作業内容〜和紙作り、缶つぶし)
和紙班。女子園生が1名手工芸班に移行する。また缶つぶし作業にK・M君を加える。
和紙ハガキの絵柄を母ボラに作ってもらい、カードも作成していった。またマーベリ
ングなどで模様を付ける。福智山麓花公園での販売が始まる。園生が各作業にかなり
定着できてきた。
平成9年度(作業内容〜和紙作り、缶つぶし)
和紙班。6月よりジラフコポレーションから依頼を受け、○月に和紙ハガキ100枚を納
品する。作業工程においては、戸畑共同作業所の工程を参考にして、きめを細かくしたり、
プレス掛け工程を取り入れる。良質な和紙作りを進めていく事で、一部の園生の技術向上
を図っていった。
平成10年度(作業内容〜和紙作り、缶つぶし)
和紙班。八女伝統工芸館で和紙作りを研修し、以後原料(楮・三椏・パルプ混合)を購入
して牛乳パックと混ぜ、ハガキを作成していく。また大型のプレス機を導入していき、ハ
ガキのさらなる品質向上を図った。
平成11年度(作業内容〜和紙作り、缶つぶし)
和紙班。ハガキは昨年度同様、牛乳パックと八女伝統工芸館から購入している原料との混
合原料で作成する。また今年度から原料のみで便箋・封筒を作成していった。N・H君を缶
つぶし作業から原料の計量、ミキサー掛け作業に移行する事で拘り軽減と脱臼防止を図っ
ていった。I・Eさんが手工芸班から移って来て、計11名となる。
写真) 「書」 園生作
写真)空き缶つぶし作業風景
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