--- 鷹取学園20周年資料 ---


          農 園 芸 班 と 私

                             嘱託指導員 牧 村 好 夫

                                   
 私は嘱託職員として、学園に勤務を始めて15年目を迎える。農園芸の指導が主である。
専門知識と経験で、少しばかり自信を持っていたつもりでの学園勤務だったが、最初は私の人生で初めて経験する事ばかりで、連日が戸惑いの連続であった。
 例えば「何度度教えても覚えてくれない」、今植えたばかりの苗を平気で引き抜く、せっかく奇麗にした畑の上を縦にドンドン歩いてまわる。草も野菜も見分けがつかないといった具合で、段々教える事への不安と自分が何故教えにいっているのかがわからなくなってしまった。帰宅して段々愚痴をこぼす事が多くなるにつれ、家族の者も「早く辞めなさいよ」と言うようになった。
「3ヶ月保たないで辞めたよ」と言われたくないばかりが、私の支えだったが…。
 あの日の私が何のヘマをやったのかは今、定かではないがH君が「せんせい馬鹿だねー」と言った。そのH君の一言が何となく仲間として認めて貰ったような気になると同時に心をお互い開いた会話が出来るようになっていった。
 今では「馬鹿だねー」が段々エスカレートし、「おじちゃん」に移行し、「おっちゃん」と呼ばれている。
 私は職業柄、各地の園芸講座で話しをする事が多く「せんせい」と呼ばれることに慣れていたので、彼らに何が「おっちゃん」だ「せんせい」と呼べ、と言えば言うほど「おっちゃん」と呼ぶ声が大きくなり、全然とりあってくれなくなった。今ではそういう心の付き合いを大切にし、深めていきながら園生のみんなと話している。
 最初は前述の様に平気で畑を踏み、草も野菜苗も判らずに引き抜いていた彼らも最近では言葉で
作業内容を説明すると理解し、ちゃんと自発的に作業をするようになってきた。
 自分から「今日は水かけがいいの」とか、「ハウスの開け閉めはどうする?」とか言うようになったことも大きな進歩であると思っている。私はこれからも彼らの「師」と言うよりも、良き「おっちゃん」であり、良き友でありたいと願っている。
 最後に鷹取学園が20周年を迎えられた事を心よりお慶び申し上げます。
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