--- 鷹取学園20周年資料 ---
調 理 実 習 に つ い て
指導員 田 畑 亜 美
1.はじめに
昭和60年7月、清水基金より助成を受けて、生活実習棟が建設された。その目的は、外来者の控え室・父兄の宿泊等の場所として、そしてもう一つ、よりゆとりある生きがいのある生活の場を創る為の訓練の場所として造られた。学園の調理実習は、自立に向けての取り組みもさる事ながら、基本的要求である食べる事を通して、より広く楽しい経験をさせるという意味合いの方が強いと思われる。毎週土曜日の午前中を調理実習の時間とし、荻迫料理学校の荻迫先生、武谷先生に指導を受け始まった。職員は実習園生の調理中の危険や実習態度、調理のポイントを介助しながら実習に当たっている。当初は今まで料理を作った事のない人がほとんどであったが、真剣に一つ一つ取り組んでおり、実習園生11名でスタートしたものが、年々一人でも多くの園生に調理を経験させようと、現在では32名の園生が対象者となり、8班に別れ毎月第1、第3土曜日の午前中に順番で行っている。調理が出来ない園生も、試食という形で参加させる様にして来た。今では全員が楽しみとして待っている。
2.調理実習の経過
(1)経過と内容
昭和60.9〜61.8 対象園生・女子11名 平均IQ34.8
↓ 調理の出来そうな女子園生のみでスタート
昭和61.9〜63.3 対象園生・女子15名、男子2名 平均IQ32.3
↓ 男子園生が2名加わる
調理実習評価導入(表1、表2参照)
昭和63.4〜平成1.3 対象園生・女子17名、男子2名 平均IQ31.4
↓
平成1.4〜平成1.3 対象園生・女子17名、男子7名 平均IQ31
↓ 調理の出来そうな男子園生5名をさらに加える
平成2.4〜平成3.3 対象園生・女子16名 男子8名 平均IQ26.6
↓
平成3.4〜平成5.3 対象園生・女子15名 男子9名 平均IQ25.3
↓ 調理実習評価導入(表3参照)
平成5.4〜平成8.3 対象園生・女子16名 男子9名 平均IQ25.8
↓
平成8.4〜平成9.3 対象園生・女子18名 男子10名 平均IQ24.8
↓
平成9.4〜平成11.3 対象園生・女子18名 男子12名 平均IQ24.6
↓
平成11.4〜現在 対象園生・女子19名 男子13名 平均IQ24.4
・メニュー決めは先生の方より状況を見ながら決定してもらう。
・調理の材料は、講師の先生の方で準備(学園でそろう材料は園で準備)
・メニューはメンバーが一巡して交代(1回4名づつ参加)
・女子指導員かせ1名1ヶ月交代で実習に参加
・試食は昭和63年までは職員2〜3名が行っていたが、平成1年より、実習メンバー以
外の園生全員を対象とし、順番で毎回2名と職員1名が行っている。
(2)メニュー紹介
(昭和60年)
・串だんご
・ババロア、バナナミルク
・そぼろご飯、汁
・クッキー
・ウインナーのつつみ焼き、ポテトスープ
・ケーキ
・ピッツァトースト、りんごのカッテージサラダ
・ミートソース、イールフロッタント
・親子丼、三角卵のすまし汁
・味ご飯、コーヒーゼリー
(昭和61年)
・新じゃがいものノサップ煮、豚肉と大根のホイル焼き
・バナナブレット、バナナジュース
・トマトとマカロニソテー、ワカメスープ
・ユーニチャウダー、いなり寿司
・冷麦、豚肉とこんぶの炒煮
・カレーピラフ、即席ピクルス
・おこのみ焼き、コーヒーゼリー
・シーチキン寿司、トマトとなすの炒め物
・豚みそめん、むしカステラ
・ごもくご飯、カップケーキ
・マカロニシチュー、りんごとカッテージチーズのサラダ
・デコレーションケーキ
・チキンポトフ、ポテトもち
・カレーライス、ブウマニジュいちごジュース
(昭和62年)
・若鶏くんせい焼き、ゼリーとフルーツサラダ
・サンドイッチ3種、即席コーンスープ
・若鶏トマトソティ、ほうれん草バター炒め、あんみつ
・リャンメン、なすとトマトの炒め物
・牛肉と野菜のまぜご飯、レモン果汁ゼリー
・鶏肉のチーズあげ、野菜炒め、ピーナッツクッキー
・ポークビーンズ、ケーキ
・豚肉と野菜のホイル焼き、スパゲティ野菜ソース
・かつ丼、ピーナッツあめ
(昭和63年)
・ピッツァトースト、かぼちゃのポタージュスープ
・酢豚、トマトのサラダ
・ヅァジャンメン、ババロア
・カレーピラフ、ヨーグルトゼリー
・グラタン、大根とあぶらげの炒め物
・親子丼、ゆず大根、スイートポテト
・おもちと豚肉の炒め煮、スイートポテト
・ハンバーグステーキ、キャロットゼリー
(平成1年)
・おぼろご飯、丸子揚
・ハッシュライス、シュレイ豆腐
・チキンライス、いわしの黒ぼりあげ
・フライドチキン、白菜スープ、白菜サラダ
(平成2年)
・スパゲティミートボール、肉と高野豆腐の野菜炒め煮
・ピザトースト、くずもち
・冷麦、串かつ
・さけ寿司、かぼちゃと鶏肉の煮物
・中華風魚のいりだき、マカロニシチュー
・かんたんサバラン、スカンジナビアサラダ
(平成3年)
・ロールキャベツ、紅茶ゼリー
・シーチキンスパゲティ、黒砂糖の蒸しパン
・おはぎ、サラダ ドゥ トマト
・ピザ、とうもろこしのスープ
・かしわ飯、かす汁
(平成4年)
・いちごのショートケーキ
・若鶏のチーズフライ、ファニーポテト
・牛丼、ピーナッツクッキー
・てんぷら、中華風玉子焼き
・カレーピラフ、にんじんスープ
(平成5年)
・皿うどん、フルーツヨーグルト
・マカロニトマトソティー、じゃがいものノサップ煮
・ローストチキン、ミネストローネ
・マカロニサラダ、里芋と鶏肉の中華風煮込み
(平成8年)
・ハンバーグ、ミントサワー
・マカロニグラタン、オレンジババロア
・レモンドロップドーナツ、バナナジャクリーヌ
(平成9年)
・ジャージャーめん、フルーツワインゼリー
・鶏手羽元のカレー味、杏仁豆腐
・スパゲティミートソース、サンドイッチプリン
(平成11年)
・コーンとじゃがいものグラタン、キャロットゼリー
・カレーピラフ、冷やし水ぎょうざ
・あんまん
(3)評価
【評価内容については、学園の実態に応じた評価内容を設け記録して来た】
表1.調理実習評価表@(昭和61年度使用)
1 食器を運ぶ 2 食器をしまう 3 食器を洗う
4 お米をとぐ 5 野菜を洗う 6 汁物をよそう
7 包丁を持つ 8 包丁で切る 9 量をはかる
10 片づける 11 火熱を使う 12 味つけをする
13 火の通りを見る 14 身づくろい 15 清潔さ
16 態度 17 安全度 18 依存度
表2.調理実習評価表A(昭和62年4月〜平成4年7月まで使用)
1 身づくろいをする 2 清潔の保持 3 食器を出す、運ぶ
(エプロンをつける)
4 食器を(同じ種類で)しまう 5 食器を洗う
6 野菜・果物を洗う 7 お米をとぐ 8 道具類(鍋等)を洗う
9 ガスの操作 10 包丁で野菜を切る 11 包丁で(肉を)切る
12 包丁で皮をむく 13 包丁が正しく持てる 14 計量スプーンではかる
15 計量カップではかる 16 はかりではかる 17 火力の調節
18 味を見る(味つけ) 19 火のとおり具合をみる 20 泡立て器が使える
21 汁物をよそう 22 ごはん、おかずの盛り付け
23 配膳 24 お茶を入れる 25 安全に気をつける
表3.調理実習評価表B(平成4年8月〜現在使用)
1 実習棟掃除 2 エプロンをつける 3 手を洗う
4 計量スプーンで計る 5 計量カップで計る 6 計量器で計る
7 点眼・消火をする 8 火力調節 9 道具(鍋)を洗う
10 材料を洗う 11 米をとぐ 12 包丁が正しく持てる
13 包丁で皮をむく 14 包丁で野菜を切る 15 包丁で肉を切る
16 泡立て器が使える 17 ごはん、汁物をよそう 18 料理の盛り付け
19 配膳(料理を運ぶ) 20 お茶を入れる 21 食器を洗う
22 食器を拭く 23 食器の出し入れ(同じ器)
24 全体の安全に気を配る
※実習評価表について→1項目5段階でチェック、また、別に文章にて状況の記録を
残す
1.全面介助 2.ほぼ介助にて行う 3.声掛けと少しの介助が必要
4.声掛けと指示のみで行う 5.一人で出来る
【内容については資料1.2.3.4.5.の通りであり、現在使用している点を添付する】
料理は、基本動作の繰り返しにて展開される。実習にあたっては、記録を残す事は大切な事である。出来ない、出来る部分の把握と、なぜ出来ないのか、どのように工夫すれば良いのか等の目やすとする為に使用している。
全対象者を通して言える事は、総合評価においては特に大きな変化はあらわれていない。しかし、一人一人を項目別に見ると、食器洗いが出来る様になった人、お米を流さなくなった人、ガスの操作が出来る様になった人、包丁が持てる様になった人・…等の変化があらわれ始め、繰り返し取り組み「なれる」事の成果を感じる。
園生自身、料理をする事が好きで、実習当日メンバーという事を知ると、前日より楽しみとしている。実習中はメンバー4名の中で、それぞれ役割分担を決めながら協力し合い行っており、料理を作った事が喜びと自信につながっている。
自宅で調理経験のなかった園生でも興味を示し、少しでも出来そうな可能性のみられる園生に対しては、一人でも多く体験する場を提供し、料理をするという雰囲気の中から楽しみや自信、生きがいにつながる様な経験を味わせていきたいと思う。
≪資料参照≫ 調理実習に関する資料(手書き分)
資料1
資料2
資料3
資料4
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