--- 鷹取学園20周年資料 ---


          給食業務を振り返って
                                 栄養士 石田久子

知的障害者の施設給食を担当して二十年目になります。入所者の健康と体力の維持向上につとめる事はもちろんですが、親元を離れて集団生活をする園生にとって家庭的な愛情のこもった食事を提供する事を第一にと考えてきました。
幸いにも、学園の食堂が単に食事をするだけでなく、皆がよく集まる集会場所も兼ねている為おいしそうな匂いにつられてのぞいたり「今日は○○やネ」と声をかけてきます。
こういうコミニケーションも大切にして行きたいと思っています。
では次に学園の給食の取り組みについて概要を記します。

1)  栄養面について 
    栄養所要量と摂取量の年次推移 図―T 参照   5年ごとの栄養所要量と摂取量   
    
    主要群別摂取量        図―2 参照
2) 献立面について

S56年開所当時は、栄養主要量を充分に満たすことに配慮していました。ちょうど10年過ぎた頃より世の中が飽食、グルメの時代になり、食品産業・外食産業の発達、加工食品の増加、食の簡便化などと著しい変化をみせてきました。食環境の変化は、集団給食である園の給食にも少なからず影響を及ぼしそうな勢いでしたが、しかしながら動きの少ない園生の肥満等の問題もあり(H元年九州大学第一内科助教授,坂田利家先生の指導により生活改善研究として10周年記念誌に掲載)、日本食本来の良さ、おふくろの味にこだわってきました。結果今日、日本食は、動物性脂肪の少ない又食物繊維の多い食事として、生活習慣病の予防にもつながることで見直されています                                      。学園は入所施設であることから、三度の食事を何よりも楽しみに待っています。、栄養的にもバランスよくすることは必要ですが、季節感あふれる食材をメニューに取り入れること等にも重点をおいてきました。
3) 衛生面について

まだ記憶に新しいとは思いますが日本中を震撼させた病原性大腸菌0−157やサルモネラ菌など、集団給食にたずさわる者として、いつ、なんどき、どんな菌が流行るのか気のやすまる時がありません。ともすれば調理室内は高温多湿の為いろいろな病原菌が増殖しかねませんが、これもH5年にエアコンが設置されたことにより緩和されました。
H6年には、食品の保管上、従来以上に衛生面、安全面を考えて大型の冷凍冷蔵庫を購入。     H9年には、まな板包丁専用殺菌消毒保管庫の購入により、使用時ごとに消毒できるようになりました。
その他にも、材料の搬入時刻や冷蔵庫の温度管理をし、使用材料の先入れ先出しなどを心がけています。調理加熱ができるものについては、75℃で1分以上加熱していますが、出来ないものについてはアルコール消毒や流水消毒などをおこなっていますので、以前より時間も手間もかかり大変です。しかし食中毒はいつ発生するのかわからない為、予防し過ぎということはなく気はぬけません。
毎日、毎日が慣れにつながらないよう、日々、衛生管理に努める一方、園生の手洗いについても衛生教育の基本である為,指導員の協力のもとおこなっています。
しかし、最重度が多く、手洗いは出来ますが消毒までの手洗いとなるとなかなか難しいのが現況でした。 図―3 参照  H12年3月に保護者会からエアータオルの寄贈があり共用タオルの使用がなくなり大変衛生的になっています。








4) その他 

毎日の食事の他に施設は行事もいろいろと多く、それに伴ない行事食も多種多様で、それが生活をするうえでの潤いのひとつとなっている様です。 図―4参照
S63年の誕生会より、それまでの園生と職員だけのお祝い会でなく、当月誕生者の保護者の方も参加し共に祝うことになりました。園生もお父さん、お母さんといっしょの食事を大変楽しみにしています。 H6年度よりは年1回ですが、外食誕生会も取り入れることになりました。
H7年度にはホットプレートを各テーブルに1台づつ購入。最初はやけどなどするのではないかと心配していましたが現在では日曜日の昼食等にお好み焼きやホットケーキ・焼き肉などあつあつ出来たてのものを各自楽しんでいます。集団給食においては適温、適食、というのは難しいものがありますがホットプレートの購入によりいくらかでもおぎなうことができるようになりました。
又、「たまには、外でお弁当をたべたいなー」という園生の声を反映して、月に1度ですが「弁当の日」というのを設け、晴天時には園周辺や、少し遠くまで足を伸ばして野外での食事を楽しんでいます。やはり野外での食事は又ひと味ちがったおいしさがあるようで大変好評です。

次に選択食の導入については(嗜好調査 図―5参照 )、自分で記入できる人はほとんどいないという最重度の施設の為、果たしてうまく自分の意思で選べるかどうかと心配しました。まず最初に数種類のドレッシングやマヨネーズの中から自分の好きな種類を選ぶようにしました。次に麺類の選択を試み、うどんとそばの二種類の中から、順番にならんで選んでもらいました。その様な準備段階を経た後、H11年度より主采の選択メニューの導入へと移行しました。最初の頃は、「コロッケにしょうか、ハンバーグにしょうか、両方共食べたいなー」と迷っている様子でしたが最近では, 順序よく順番にスムーズに選べるようになり慣れの早さに大変驚いています。
この分では今年度中にはバイキングに挑戦できるのではないかと楽しみにしています。


5)おわりに
世の中も少子化・高齢化の波が押しよせていますが、学園も入所者の平均年齢が男性34才・、女性36才・(、平均35才)」と高齢化傾向をたどっており、材料の切り方ひとつにしても心配りが必要となってきました。                             
特食もだんだんと増えつつありますが、これは医療面と連携をとりながらおこなっています。実施食形態としては、普通食以外に特食(糖尿・高血圧対策)肥満食、刻み食、粥食、代替食等です。                                           園生のQOLの向上を第一に考える時、食生活は大変重要な位置を占めるばかりでなく、食事は健康保や疾病予防に大切な役割をになっています。幸いにもH11年度には、県知事より優良集団給食施設としての感謝状を頂きました。  
今後もさらに、こころ新たに,家庭的な暖かみのある安全でおいしい食事づくりに励んでいきたいと思います。        

                               
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